中受のGHG

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首都圏の中学受験、公立中高一貫校の受検、勉強法、国語、社会についてのブログ

2017年度 開成中の国語・社会入試問題について

概観

一言で言えば、国語、社会ともに例年にない難しさでした。昨2016年も、数年ぶりに4科ボーダーラインが200点を割るなど近年稀に見る難しさと言われましたが、今年は間違いなくそれ以上でしょう。


算数も同様に非常に難度が高く、理科だけは例年並みと言われています。
従って、昨年196点を下手すれば10点程度下回るボーダーになる可能性があります。

 

国語について

国語は、そろそろ出るのではないかと囁かれていた詩が出題されました。
まさかの「みんなのうた」からの出典で、素材は「アイスクリームのうた」。1962年から放送とあるので、ちょうど私を始め現役中堅層が子供のころに親しんだ曲です。私自身は覚えていないのですが。
というようにかなり意表をつく出典ではありましたが、この問題自体は平易な問題と言えます。
難しかったのはもう1つの大問、小説文のほうです。

出典は、南木佳士の「ニジマスを釣る」です。

「落葉小僧」という短編集に収録されている作品のようですね。

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一言で言うと家族ものです。夫、妻、長男、次男という構成の家族4人が、一連の出来事を通してそれぞれの抱える事情と性格を見え隠れさせるという、一見典型的な中学入試の素材っぽい感じ。しかしながら、それぞれの事情というものが奥深く、ともすれば12歳の男子には想像することすら難しい「大人の事情」を行間から読み込まなければなりません。


面白いのは、登場人物一人一人の心を浮き上がらせるようなシーンが代わる代わる提示されるのですが、それらは全てその人物の中だけで完結していて、それに対してほかの家族がアクションを起こすということがない。つまり、一見仲のよさそうな家族でいながらお互いに微妙な距離があって、相手の心の奥深くまで踏み込むようなコミニュケーションが見られないのです。
例えば、7歳の次男が、自分と同じく年齢で倒れた唐松の木を大事そうに抱えながら、自分と同じ身長になるように切る場面があります。兄は木の死にショックを受ける弟を気遣って「木のお墓を作ってやったら」というようなことを言うのですが、父母はそれを眺めているだけで何も言わない。
この辺り、現代の家族、ひいては人と人との関係というものの姿を浮き彫りにしているように見えて仕方ありません。ただ希薄だとか、表面的だとかいうのではなく、計り知れない要素を織り交ぜた微妙な心の襞を、さりげない語り口の中に隠している。それを1つの物語として完結させるというのは巧妙というしかなく、そういう文章を入試問題に選んだことは、開成という学校の凄みというしかありません。

 

問の構成は、記述が5題。2行ものが4題に、3行ものが1題です。今回面白かったのは、解答用紙の冒頭に「常識的な字の大きさで書くこと。細かすぎる字や1行の欄に複数行書くことは減点の対象にする」と明記されていたことです。冗長な説明は不要、必要なことだけを簡潔に書きなさいというメッセージですが、これはこれまで匂わされてきただけで明確に提示されてきませんでした。この一言だけでも受験界に大きな影響を与えるでしょう。
問の1番は比喩の具体化、2番は母親にスポットが当たり、3番は父親、4番は次男、5番は長男と次男。問それぞれが家族一人一人に対応しているのも面白いと思いました。
特に2番は難しいです。可能な解釈がありすぎて、未だにどう捉えればど真ん中なのか判断つきかねます。
1番と3番はそれに次ぐ難度。4と5は正解しなければならない問題です。

 

【学校発表】

合格者平均48.2点、受験者平均42.4点

 

 

社会について

社会も、やや語弊がありますが江戸東京にこれでもかと執着した問題で、マニアックな出題が多すぎてめまいがするほどです。
開成はこれまでにも東京をテーマにした問題を断続的に出し続けているのですが、今年のものは極め付けに、ゴリゴリの東京で貫き通してきました。

 

大問1は、千葉県佐倉市にある「国立歴史民俗博物館」収蔵の「江戸図屏風」を題材にした、江戸がテーマの問題です。

 

国立歴史民俗博物館ホームページ 

江戸図屏風 〔高精細画像順次拡大版〕

 

 

大問2は、主に現代の東京をテーマにした問題で、今年は初めから最後まで通して」東京」で貫かれています。


正答率が低いと思われる問題


「加賀肥後守下屋敷があった場所」として「東京大学」を答えさせる問題


→開成で「東大」を出すのはあざとすぎるとの声も聞かれます。「前田家の江戸屋敷があった場所は?」と聞かれたらもっと正答率が高かったと思いますが。

 

 

「屋根より一段高くして家の格式を示したり、また防火用としても用いられている小屋根をつけた壁」はなにか、として「うだつ」を答えさせる問題


→単なるトリビアですね。授業ではきっと教えないと思うなぁ。

 

 

平安時代後期に、僧たちが集団となって日枝神社のみこしをかつぎ、権力者に訴えを起こしたことをなんというか」として「強訴(ごうそ)」


→ふつうに大学受験レベル。

 

 

関西国際空港福岡空港那覇空港から入国する中国、韓国、台湾の人たちの割合を選ばせる問題


→外国人観光客を扱った問題は、開成に限らず近年多く出題されています。
台湾→沖縄、韓国→福岡がそれぞれ近いというところまで考えられても、近いから多いのか、それとも近い方が逆に少ないのか迷います。正解は前者なのですが、国内線では逆にある程度の遠隔地のほうが航空路線利用が多いという知識は、開成受験者ならみな持っているはずで、それに引きずられるケースが多かったのではと思います。

 

 

フランス国旗の色の組み合わせを答えさせる問題


→嫌がらせとしか思えない問題ですが、ちゃんとヒントが出ているので、おぼろげにでも覚えていれば答えられます。

 


1964年のオリンピックでマラソン競技のコースになった旧五街道の名前


→国立競技場が新宿区にあることがわかれば、新宿=甲州街道の宿場町「内藤新宿付近」と分かり、正解に至れます。

 

 

東京都23区の位置を知らないと解けない問題


→少なくとも3問出ています。うち2問はだいたいの知識で大丈夫ですが、「荒川区はどこ」問題はもうそのものズバリすぎて笑えます。選択肢が4つなので、ヤマカンが当たるかどうかの世界でしょう。

 

 

以上、正答率が低いであろう奇問難問を紹介しました。僭越ながら、出題者の意図がはかりかねる問題もあります。荒川区=開成の所在地なので、」自分が受ける学校の場所くらい知っとけよ」ということかもしれませんが、それをに入試で聞いて何になるの、とも思います。

そのへんはさておき、こういう特殊な問題にばかりスポットを当てても次に繋がらないわけで、それ以外の問題できちんと正解できるようにしていくというのが、意味のある議論なのではないかと思います。

【社会 学校発表】
合格者平均 48.3点、受験者平均 42.2点

 

 

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