中受のGHG

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首都圏の中学受験、公立中高一貫校の受検、勉強法、国語、社会についてのブログ

2017年度 桜蔭中の国語・社会入試問題について

概況

 

2017年2月1日に行われた桜蔭中の国語と社会の入試問題について振り返ります。

合格者最低点などの入試データは非公表の学校です。したがって推測するしかありません。

一方、応募、受験状況は公表されています。

志願者→受検者→合格者→実質倍率→補欠発表人数

516→501→269→1.86 →18(2017年)

538→523→282→1.85→18(2016年)

655→629→299→2.10→28(2015年)

2015年度は2月1日が日曜日になる、いわゆるサンデーショックの年でしたので、 女子学院などのミッション系の学校が入試日を2月2日に変更。その影響で他校との競合がなくなり、受験者が集まりました。

それを除けば、ほぼ例年通りの受験状況です。

 

入試問題の傾向は、ほぼ例年通りでした。社会はやや易しめですが、それほど大きく変わっていません。

過去問をしっかり勉強してきた受験生にとっては、これまでの頑張りがそのまま結果につながるような内容だったことから、頂点校の入試傾向が男子とは全く異なる方向性になった印象です。

 

国語について

 

国語は、例年通りの形式で、大問1が論説文、大問2が小説文です。、 論説文の出典は吉村萬壱氏の「生きていくうえでかけがえのないこと」。小説文は、竹西寛子氏の「木になった魚」です。 

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竹西寛子氏の小説は、単行本化されていないようです。初出の雑誌を中古で買うしか入手法がなさそう。(画像クリックでアマゾンの商品ページに飛びます。)

 

文章二つとも、一つのテーマで統一されているのも桜蔭らしい出題のしかたです。今年のテーマは、「表現論」でした。 

 

大問1の文章は、筆者が夕陽を眺めた時の感動を描いたものです。

日頃私たちは、美しい夕陽を見ても「オレンジ色の空」としか思いません。記憶や常識の中で、「夕陽はオレンジ色」として捉えているので、同じものとして片付けてしまうのです。
しかし、そういう凝り固まった思い込みを捨てて平明な心で夕陽を眺めたならば、色や形や変化のしかたが日毎に、さらに言えば一瞬ごとに違うことに気づくでしょう。そしてそれをどうにかして言葉で表現したい。
しかし同時に、私たちの精神はそのような心を揺さぶるような体験の連続に耐えられない。普段何気なく目にしているものの一つ一つが、代替の効かない唯一の意味を持っていて、一瞬ごとにそれらが永遠に失われていくという事実に正面から向き合うことを避けて生きている。唯一それができるのは、「詩人」とよばれる人々だけだ、と言います。

常識や経験の世界を離れ、ものを「見つめ」て、真実の世界に迫っていく、そして、

あちら側とこちら側の世界とを( b )往還し、こちら側の世界にない宝を持ち帰ってはこの世界を( c )彩っていくのである。なんと勇気のある営みだろうか。

問五では、上の「こちら側の世界にない宝」とはどういうものか、それを「持ち帰って」くるとは、だれがどうすることか、という問でした。
この大問の他の問は、本文を注意深く読めば容易に捉えられるのに対し、この問だけは飛躍的に難しくなっています。本文は見ての通り多彩な比喩で彩られていて、それがこの文章の魅力になっているのですが、同時にこの問いではそれを正確に還元しなくてはなりません。
「詩の言葉」で表現するとはどういうことなのか、というテーマに対する予備知識がないと、確実に混乱してしまう問であったと思います。

 

 

大問2は、小学生の女の子が主人公の物語です。
序盤、様々な色の服を来た数人の子供達が話している場面が描かれます。
「緑色に着膨れた男の子」が、

「ぼく、ずっと前、空にいる象を見たことあるよ」

と言います。周りの子供は当然、「そんなのうそだ」と囃し立てますが、「卵色の女の子」だけは、批判的なことを言いません。なぜなら、自分にも、「人には見えないものを見た」経験があったからです。

女の子には、あちこち飛び回っている自由人の伯父がいて、その伯父さんが好きでした。
彼が送ってくれたマンゴーを食べた後、果肉の中から出てきた種を見て、「木になった魚」と表現します。甘く柔らかいマンゴーの果肉のなかに、大きく扁平で楕円形、「白髪を逆立てたような」毛立ちがある種が隠されている。その驚きを素直に言葉にしたのが、「木になった魚」でしょう。
大問1の文章では、真実を言葉に変える詩人たちのことが描かれていたのに対し、この物語は、だれもが驚きや感動を素直に捉える、「詩人」になりうることを示唆しています。「木になった魚」は、比喩でありながら比喩ではない。つまり、少女はそこに、真実に「木になった魚」を見たのであり、見たものをそのまま口に出したに過ぎないからです。

 

大問2では記述が5題出され、このうち問1、5はかなりの難問でしょう。
3、4もそれに次ぐ難しさです。
さすが女子の頂点と言える問題で、論理と感性の両面において優れた洞察力が必要になります。

 

予想合格者平均点:53点
予想受験者平均点:48点
(100点満点)

 

 

社会について

 

国語と異なり、社会は近年でもかなり易しい部類の問題だったと思います。
特に記述問題の出し方がものすごく普通で、例年のちょっと頭をひねってしまうような突っつき方はありません。


記述の出題は2つ。いずれも大問1で、一つは「富山県の砺波平野でチューリップ栽培に適した、冬に地温が低めに安定し、乾燥しない気候になるのはなぜか。」地理の基本中の基本である季節風日本海側の気候に絡めれば、簡単に書ける問題でしょう。


もう1題が、「日本で生産されるアルミニウム製品のうち、輸入されたアルミ以外の原料が使われている理由」です。これも、ちょっとした気づきが必要ですが、アルミ缶→リサイクルという、線で片付けられます。


他の問いにも特に特筆すべきことはなく、従ってコツコツ勉強してきた子が順当に点を取った問題だったと言えます。社会ではおそらくあまり差がつかないでしょう。

 

予想合格者平均点:49点
予想受験者平均点:45点
(60点満点)

 

 

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